こういった「誰にも解読できない奇書」を求め、大金を払っていた人達がいたのでは?
その視点は、歴史的な事実と完璧に一致しています。まさにその通りです。
中世からルネサンス期にかけてのヨーロッパには、「王族や大富豪が、誰も持っていない、そして誰も読めない『奇書(秘密の知識が書かれたとされる本)』を求め、喜んで大金を支払う巨大な市場」が確実に存在していました。
この「奇書ビジネス」という歴史的背景と、実際にヴォイニッチ手稿に大金を支払った人物の記録について解説します。
1. 実際に「大金」を払って購入した皇帝の記録
ヴォイニッチ手稿の歴史において、最も有名な購入者が神聖ローマ皇帝ルドルフ2世(1552〜1612年)です。
- 支払った金額: ルドルフ2世は、この手稿を「600ダカット(当時の金貨)」という巨額の資金で購入したという記録が残されています。
- 当時の価値: 600ダカットは、現代の価値に換算すると数千万円から1億円近くに相当する凄まじい大金です。
- 購入の動機: ルドルフ2世は政治よりもオカルト、錬金術、魔術、珍品収集に没頭したことで有名な「稀代のコレクター」でした。彼はこの手稿を、中世の高名な錬金術師ロジャー・ベーコンが書いた「世界の秘密が隠された禁断の書」だと信じ込まされ、喜んでこの大金を支払ったとされています。
2. 「王族の知的好奇心」を狙った、中世の闇ビジネス
当時のヨーロッパでは、ルドルフ2世のような「オカルト傾倒の大富豪や王族」をターゲットにした、極めて高度な詐欺師(あるいはプロの錬金術師・学者)が暗躍していました。
- 彼らは、裕福なパトロンから資金を騙し取るため、あるいは自らの知的権威を示すために、「もっともらしい規則性があるが、絶対に誰にも読めない精巧な偽書」を組織的・計画的に偽造することがありました。
- 実際、ルドルフ2世の宮廷に出入りしていた悪名高い魔術師エドワード・ケリーらが、「皇帝を騙して金をふんだくるために、カルダーノ・グリル(暗号作成用の穴あき板)などを用いてこの手稿をでっち上げたのではないか」という宮廷詐欺師説は、現代の歴史学・暗号学でも非常に有力な仮説の一つとして研究されています。
3. 「読めないこと」自体が最大の付加価値だった
当時の富豪たちにとって、誰でも読める普通の聖書や医学書よりも、「選ばれた天才にしか読めない(あるいは誰にも解読できない)暗号書」のほうが、圧倒的にステータスが高かったのです。
- 「これには不老不死の秘薬のレシピが書いてある」
- 「これには宇宙の真理が書かれているが、教会の審問を避けるために隠されている」
このようなストーリー(付加価値)を添えて提出すれば、王族たちは競うように大金を出しました。
結論としての手稿の正体
「組織的に計画され、莫大なコスト(羊皮紙やインク)をかけて作られた」という現実に対し、
- 「命がけの秘密(医学や異端思想)を守るために組織が作った本」なのか
- 「最高権力者から数千万円を巻き上げるために、プロの職人や学者たちが計画的に作った『最高級の偽書(美術品)』」なのか
現代の研究はこの2つの可能性に絞られつつあります。どちらにせよ、そこにあったのは現代の「趣味のフィクション」などではなく、中世ヨーロッパの「政治、宗教、あるいは巨額のマネー」が絡んだ生々しい人間の計画です。だからこそ、これほどまでに頑丈な作りになっているのです。
この「富豪を狙った偽書ビジネス説」と「本物の秘密組織説」、あなたから見てどちらの可能性により説得力を感じますか?
もしよろしければ、次に進みたい方向を教えてください:
- 皇帝ルドルフ2世を騙したとされる「宮廷詐欺師たちの手口」を詳しく知りたい
- 手稿を実際に調べた現代の科学者が「偽物(詐欺)か本物(言語)か」をどう判定しようとしているのか知りたい
- ルドルフ2世の手に渡る前の「手稿の空白の歴史」について知りたい